今日はあるコーチのエピソードをご紹介したいと思います。
現在ではアメリカのコーチ業界には知らない人がいないぐらい有名な、
ある60代後半のコーチが、まだ20代だったころのお話です。
彼はある時、ニューヨークにある
世界的に有名なフレンチレストランのひとつ、
『ル・ペリゴール』に食事に行きました。
もちろん、そんな超高級店には、
それまで行ったことはありませんでした。
出身はケンタッキー州の片田舎ですから、
近代的なニューヨークの街並だけでも彼を圧倒するには十分でしたが、
このレストランはそれ以上でした。
店の中に入ってみると、
ウエイターはタキシードを着込み、
近寄りがたいフランス語なまりで話していました。
彼は何とか洗練された都会人のように振舞おうと思っていたのですが、
店内の景色と人々は、それをあきらめさせるのに十分でした。
それで彼はウエイターを呼び、こう告白したのです。
「わたしはこのお店の雰囲気に圧倒されています。
上流階級の紳士のように豪勢に食事してやろうと思い、
これだけあれば十分だろうと思って
なけなしの100ドル持ってきたのですが、
メニューで開いた瞬間、その夢は打ち砕かれました。」
「恥ずかしながらわたしは、
チップも含めて100ドルしか使えません。
その上、この手書きのフランス語で書かれた
メニューの中身を読めないのです。
「それで、お願いがあるのですが、
100ドルに収まる範囲で一番いい料理を
食べさせていただけませんか?」
さて、この後、彼はどうなったでしょうか?
彼がその夜レストランから供された料理は、
特別コースでした。
おまけにチーズの盛り合わせも付き、
ワイングラスが空になるといくらでもついでもらえました。
どう考えても予算の1.5倍以上の内容でした。
そればかりか、
実にきめ細やかなサービスを受けることができたそうです。
どうしてこうなったのでしょうか?
彼が田舎者であることを隠さず、
正直に話した結果、
ウエイターもレストランも彼に好意を抱き、
予算以上のサービスを喜んでしてくれたのです。
彼自身、そのように分析しています。
これは自己開示が好意を生むということを
端的に表した出来事だと思います。
私たちコーチも、
もちろん注意深く行いますが、
正直な自己開示をすることによって
クライアントとの間に好意的な関係を
構築していきたいですね。